SNSでの共有が当たり前になった今でも、写真を「紙」にプリントする行為には特別な魅力がある。かつてフィルム写真の時代では、現像とプリントはワンセットだった。デジタル化によって多くの写真は画面上だけの存在になったが、それでも多くのフォトグラファーが紙へのプリントにこだわり続けている。特に展示会や写真集では、どんな紙を選び、どうプリントするかによって、同じ写真でも全く違った印象を与えることができる。
そんな展示やプリントにこだわるフォトグラファーの一人である酒井貴弘氏は、2025 年1月に個展「 Reminiscence of the Planet -China-」を開催した際、質の高い展示を目指す中で、高品質な用紙やプリントで知られる三菱王子紙販売株式会社(ブランド名「ピクトリコ」)にサポートを依頼。用紙や一部作品のプリントでご協力をいただいた。
そんなご縁から今回、酒井氏が東京・両国にある同社を訪問。機能材本部 画像資材営業部ビジュアルデザイングループの山本真也氏と、ピクトリコ プリント工房 プリントマネージャーの栃原廣之氏からお話しをお聴きし、写真用紙開発のフィロソフィーからハイクオリティなプリント技術まで、ピクトリコが築き上げてきた知見と技術に迫った。
歴史と技術で培われた確かな品質

まずはピクトリコの成り立ちと、写真業界での位置づけについて教えてください。
ピクトリコブランドは、元々1998年に旭硝子(株)の子会社として立ち上がりました。当時はインクジェットプリンターの品質が著しく向上し、それに合わせてプロフェッショナルも納得できるハイクオリティの用紙開発を手がけていました。その後、2006年に親会社が三菱製紙(株)に変わり、製品ラインナップを拡充してきました。
当時は、印刷業界が大きく変わる転換期でした。従来のアナログ印刷からデジタル印刷へのシフトが加速し、それに伴って印刷用紙のニーズも多様化していました。特に写真家が求める品質レベルは非常に高く、市場にある一般品では満たせない要望が数多くありました。そこで私たちは、用紙メーカーならではの専門性と技術力を活かし、プロフェッショナルのニーズに応える製品開発を進めてきました。
私が入社した頃は外苑前にオフィスがあり、ホワイトフィルムやフォトペーパーといったフォト用途、印刷業界の校正用途、そして透明フィルムなどの製版用途と、大きく3つのブランドで展開していました。コンシューマー向けのフォト用紙は4種類程度でしたが、そこから徐々に品揃えを増やしていきました。特に写真家の方々から「こんな紙が欲しい」というご要望を積極的に取り入れながら製品を開発してきました。
写真印刷業界におけるポジショニングはどのようなものでしょうか?
写真印刷業界で品質にこだわっているのが私たちの特徴です。厚手の印画紙や特殊紙をベースに、鮮やかな発色、豊かな階調表現、黒の締まりを実現するため最適なインク受容層を設計し商品化しています。市場では「こだわりのある方が使う」というポジションで、市場の一般品にはない用紙を求めるプロフェッショナル・ハイアマチュアをターゲットに販売をさせていただいています。
印刷用紙というのは非常に繊細で、わずかな製造条件の違いが仕上がりに大きく影響します。
私たちは三菱製紙の技術を背景に、安定した品質の製品を提供することに注力しています。
プロフェッショナルな写真家の方々は、色の再現性や質感なども含めて製品を選ばれますので、妥協のない製品づくりが求められます。
写真家と紙、展示というのは切り離せない関係ですから、より深い繋がりを作っていきたいと考えています。私たちはただ紙を売るだけでなく、写真表現全体をサポートするパートナーでありたいと思っています。
印刷用紙開発におけるフィロソフィーやこだわりを教えてください。
私たちの強みは、国産であること、そして三菱製紙の技術で作られていることです。
ベース紙、インク受容層、紙白、この3 つが重要ですが、特にベースの紙に合ったインク受容層はそれぞれレシピが異なります。インクを最適に受け止める層の設計が不可欠です。
ここのノウハウが三菱製紙では確立されています。
また、徹底した品質管理にもこだわっています。一枚の作品を完成させるのに何枚もプリントを無駄にするようなことがあっては、写真家の方の時間とコストの両方が失われてしまいます。そういった意味では、高品質な材料を使い、厳格な品質管理のもとで生産される私たちの製品は、長い目で見れば経済的でもあります。こうした目に見えない努力を通し、繊細な感性を持つプロの方々に選ばれ続ける製品を目指しています。
プロの感性を引き出す、豊富な表現選択肢

ラインナップの多さも特徴的ですよね。普通は光沢とマットの2種類程度なのに、かなり種類が豊富だと感じます。
そうですね。私たちは光沢、半光沢、マットだけでなく、その間の様々な質感を10種類以上揃えています。写真の内容だけでなく、被写体と紙質のマッチングを重視した選択肢を提供しています。
例えばポートレート写真1枚をとっても、撮影対象の性格や雰囲気、写真家の表現意図によって、最適な紙質は大きく変わります。肌のきめ細かさを強調したい場合は白色度が高めの紙が、温かみのある雰囲気を出したい場合はクリーム色がかった紙が適しています。これは単なる好みの問題ではなく、写真の表現力を最大化するための重要な選択肢なのです。
マット紙でも発色性の良いものを提供しているのも特徴です。一般的にマット紙は発色が落ちると思われがちですが、私たちの製品は顔料インクでもきちんと発色するよう開発されています。
バライタ調用紙として人気の高いGEKKOシルバーラベルプラスは、伝統的な銀塩写真の印画紙を基に、デジタルプリント向けに発展させたものです。深みのある黒と豊かな階調表現が可能で、多くのプロフェッショナルに愛用されています。

プロとして紙選びのトレンドはありますか?また、どのように紙を選んだらよいでしょう?
最近ではマット紙が人気です。ただ、同じものを使い続けると見る側も慣れてしまうので、今度は光沢のあるものが注目されるといった風に波はあります。
トレンドの変化は、写真の表現スタイルや時代の美意識を反映しています。例えば2010年代前半は高彩度でコントラストの強い写真表現が流行し、それに合わせて光沢紙が好まれました。近年はより自然で、ある種の「味わい」を大切にする傾向があり、マット紙や半光沢紙が選ばれるようになっています。
展示の場所や照明条件も紙選びの重要な要素です。ギャラリーの強い照明下では光沢紙の反射が気になることがありますし、逆に自然光が入る空間では光沢紙の透明感を活かせるケースもあります。最終的には作品の世界観と展示環境を総合的に考慮して選ぶことが大切です。

販売数ではセミグロスペーパー(半光沢)が一番出ています。セミグロスペーパーは適応性が高く、光沢ムラがほとんどなくて使いやすいです。特にポートレートなど、人物の肌の質感を自然に表現したい場合に向いています。
光沢ムラというのは、インクの乗った部分と乗っていない部分で光の反射具合が異なる現象です。プリンターのインク種類も影響します。昔は染料インクが多かったので光沢紙が好まれましたが、保存性やグレーバランスの観点から顔料インクが主流になり、光沢ムラが目立ちやすいです。
特に肌のような中間調が重要な被写体では、この光沢ムラが自然な表現を損なうことがあります。セミグロスはこの問題を軽減し、なおかつ適度な光沢感で立体感も表現できるバラン
スの良い紙ですね。
モノクロ写真に対しては、特別なこだわりをお持ちの写真家が多くいらっしゃいます。色の要素がない分、階調表現や紙の質感がダイレクトに作品の印象を左右します。そのため、私たちはモノクロ表現にも力を入れてきました。かつての三菱製紙モノクロ銀塩印画紙「GEKKO」の遺伝子を受け継ぎ、IJ 用紙としてGEKKOシリーズを販売しています。

Sakaiプロフェッショナルを魅了する、作品の意図を汲み取るプリント技術

プリントの品質を実現するために特に注意されていることは何でしょう?
作品の意図をしっかり読み取ることを一番大切にしています。モニターで見る色味とプリントして出てくる色味は必ず違ってきますから、モニターに映し出されている画像の色と紙の特性を合わせて微調整していきます。特に白飛びや黒つぶれの部分は慎重に扱います。モニターでは問題なく見える部分も、プリントするとハイライト部が何もなくなったり、シャドー部が真っ黒になったりすることがあるんです。
プロフェッショナルなプリントワークでは、作家の意図を理解することから始まります。
「この写真で何を表現したいのか」「どんな印象を観る人に与えたいのか」といった本質的な部分を把握することが、技術的な調整の前提となります。それができて初めて、適切な紙選びや色調整が可能になります。
風景写真なら空間の広がりを感じられるように、ポートレートなら肌の質感や目の表現を重視するなど、被写体によっても調整方法は変わります。プリンターの特性も考慮し、紙に合わせた設定で調整するのも重要なポイントです。例えば、同じRGB 値のデータでも、プリンターや紙によって発色は変わりますので、その特性を熟知した上での調整が必要になります。
私の作品を印刷していただいた時も工夫されたと伺いました。
はい。酒井さんの作品を拝見した時に、写真の空気感や光の柔らかさを感じました。
今回使われたシルバーラベルプラスという紙は、色味が強く出て黒もしっかり出る特性があります。力強い表現が得意な紙なので、柔らかい印象の画像との差を埋めるため、色が強すぎず、コントラストが強くなりすぎないよう特別に調整しました。
写真家の方と直接お話できる場合は最も理想的ですが、それが難しい場合でも、作品からその意図を読み取るようにしています。画像データを見るだけでなく、これまでの作風や、作品に添えられた言葉なども参考にします。「この写真はこういう風に見えてほしい」という作家の思いを、技術で実現することが私たちの仕事だと考えています。

家で自分でプリントした時も同じように調整しましたが、プロにお願いしたらさらに高いレベルで仕上がっていて、まるで答え合わせのようでした。これは自分でプリントする場合とプロに依頼する場合の大きな違いですね。
ご自身の作品を自分でプリントするのは素晴らしいことですが、どうしても客観的な視点が欠けることもあると思います。私たちはプリントの専門家としての客観的な視点から、作品がさらに魅力を増すための提案をすることができます。また、紙の特性を熟知しているので、表現したい仕上がりに最適な紙を提案できることも強みです。
経験豊かなプリント技術者は、「この表現にはこの紙が合う」という直感的な判断ができます。また、色彩理論や印刷技術に関する専門知識をもとに、作家もまだ気づいていない新たな魅力を引き出すこともあります。それは単なる技術的なサポートではなく、作品に込められた想いを一緒にかたちにしていく、創造的なコラボレーションだと私たちは考えています。

カラーマネジメントやプリント用データの作成について、何かアドバイスはありますか?
プリント用データを作る際の注意点として、トーンジャンプやカラーノイズの問題があります。モニターでは気にならなくても、プリントするとはっきり目立つことがあるんです。色を鮮やかにしすぎたり、明るさを極端に上げすぎたりすると、これらの問題が発生しやすくなります。特にハイライトとシャドーの部分は飛ばしすぎたり潰しすぎたりせず、ある程度情報を残しておくことをお勧めします。
デジタル写真では、撮影時のRAWデータに含まれる情報量が非常に重要です。後からの調整の幅を確保するためにも、撮影からプリントまでを一貫して意識すると、最終的なクオリティが高くなります。特に露出については、ハイライト部分の白飛びに注意することで、プリント時の表現の幅が広がります。
カラーマネジメントに関しては、完全な一致を目指すのではなく近似値として考えるのが現実的です。モニターと紙では発色の原理が異なるので、最終的には実際にプリントして確認し、感覚的に調整していく方が良いでしょう。その際、私たちがサポートすることで、効率的に理想の仕上がりに近づけることができます。
モニターキャリブレーションをしていても、完璧な色一致は難しいものです。プロフェッショナルな現場では、モニターでの確認とテストプリントを繰り返しながら、理想の表現に
近づけていく作業が不可欠です。このプロセスをサポートするのも、私たちの重要な役割だと考えています。
ここ、両国のショールームに来ていただければ、その場でテストプリントを出して比較検討することも可能です(事前予約制・枚数制限あり)。
フォトグラファーは「今選びたい」というニーズがあるので、その場で確認できるのは素晴らしいですね。
実は、ご自身の写真を使った印字サンプルもお作りしています(有償)。お客様のデータを当てはめて全種類の用紙にプリントした比較見本を作ることができます。ご自身専用のサンプルができるので、新たな発見もあり、紙選びの参考にしていただくことができるのでおすすめです。

展示とフレーミングでプロの表現力を高める
デジタル全盛の時代に、あえて紙にプリントする意義はどこにあると思いますか?
プリントされた写真には、デジタル画面では感じられない「モノ」としての確かな存在感があります。紙の質感や光の反射といった要素が重なり合うことで、空間の中での佇まいが生まれます。SNSでは画像を流れるように見ることが多いですが、プリントされた写真は見る人の足を止め、じっくりと作品に向き合う体験を生み出します。写真家にとっては、そのような体験をどのように設計するかという点も、作品表現の重要な一部ではないでしょうか。
物理的なプリントには、「時間性」と「空間性」があります。観る人が自分のペースで作品と対話でき、空間の中での存在感も感じられる。これは画面上のイメージでは体験しづらい部分です。特に展示空間では、作品同士の関係性や配置によって、写真の意味さえも変化していきます。そういった総合的な体験をデザインできることは、写真家にとって大きな表現の自由につながります。
コミュニケーションの面でも違いがありますね。SNS も当然コミュニケーションですが、「モノ」としてプリントされた作品を通じて生まれるやり取りは別物です。SNSで作品を見た時の感覚と、展示会場で作家から説明を聞いて帰る時のドキドキ感は全く違います。「モノとして得た」という経験、「その場に足を踏み入れた」という感覚は、デジタルでは代替できないものではないでしょうか。
長期保存に関して、何かアドバイスはありますか?
プリント工房では顔料インクを使用しています。用紙ラインアップの中にはアシッドフリーの保存性の高いものもありますので、通常の環境下であれば、数十年単位の保存が可能です。ただし直射日光やオゾンなど、色素を分解する環境に放置すると劣化します。印刷後は、高温、高湿、直射日光、風通しの良い場所を避けてください。アーカイブ専用の箱や袋、ファイルなどを活用することもおすすめです。
作品の長期保存を考えると、額装は単なる装飾ではなく保護機能も担っています。
特に紫外線カットガラスを使用した額装は、紫外線による退色から作品を守る重要な役割を果たします。
一方で、作品が時間とともに変化していく姿を受け入れる考え方もあります。完璧な保存を目指すのではなく、経年変化を作品の一部として捉える写真家もいます。どちらのアプローチを取るかは、作家の哲学や作品の性質によって異なるものでしょう。

展示におけるフレーミングについて、専門家としてのアドバイスはありますか?
フレームやマットは写真に「お化粧をする」ようなものです。フレームの太さ、色、材質によって印象が大きく変わります。例えばマットの幅を狭くすると作品に迫力が出ますが、少し窮屈に見えることもあります。逆に幅を広くすると上品な印象になりますが、写真自体は小さく見えます。展示空間との調和も考慮して選ぶことが大切です。
フレーミングは写真だけでなく、展示空間との関係性も考慮すべきものです。同じ作品でも、白い壁に掛けるのか、色のある壁に掛けるのかで最適な額縁は変わってきます。また、展示全体の統一感を出すために、シリーズ作品は同じスタイルの額装を選ぶことも多いですね。
額装には様々なスタイルがありますが、写真作品の場合、基本的には作品を引き立てるシンプルなデザインが好まれます。派手な装飾の額縁は作品の邪魔をすることがあるので注意が必要です。ただし、作品のコンセプトによっては、あえて特徴的な額装を選ぶこともあります。展示の意図とフレーミングが一体となった時、最も効果的な表現が可能になるのです。
メニューにない特殊な額装でも柔軟に対応しています。以前、表参道のギャラリーでは、アルミフレームを曲げて展示した写真家の方がいらっしゃいました。銅板のような特殊な処理をして、影の表現も含めた立体的な展示になり、とても印象的でした。酒井さんの展示でも縁を蛍光テープで貼られていて、LED が光っているような効果が出ていましたね。
従来の額装の概念を超えた実験的な展示方法も、写真表現の可能性を広げる重要な要素です。
例えば写真をアクリルブロックに封入したり、木材やメタルなど異素材と組み合わせたりすることで、平面作品に新たな次元を加えることができます。私たちはそういった実験的な試みも積極的にサポートしています。
展示会場の照明条件によって紙質やプリント法の選択は変わりますか?
かなり変わります。強い照明のある展示場所では光沢紙は反射が強すぎてしまうので、半光沢紙やマット紙をお勧めします。逆に柔らかい光の環境なら、光沢紙の透明感を活かせます。また暗い展示環境では少し明るめにプリントするなど、展示空間に合わせた調整も重要です。
照明の色温度も重要な要素です。美術館やギャラリーの多くは5000K前後の自然光に近い照明を使用していますが、カフェやレストランでの展示では、より温かみのある光の下で作品が見られることも考慮する必要があります。このような環境の違いを事前に把握し、それに合わせたプリント調整を行うことで、どんな場所でも最適な状態で作品を見せることができるのです。
ピクトリコでもギャラリーを運営しています。プロの方はもちろん、写真展デビューの方でも気軽にご利用いただけるようになっています。展示のレイアウトから告知DMの準備までサポートしますし、都内の他ギャラリーへのDM発送も代行しています。プリント工房で制作しギャラリー展示までをワンストップで対応できるところは、他にはない強みだと思っています。
ギャラリーも単なる貸しスペースではなく、展示の成功をトータルでサポートする場所であるべきだと考えています。特に初めて展示を行う方には、展示構成の相談から、経験に基づいたアドバイスを提供しています。また、展示を見に来られた方々の反応やフィードバックを作家に伝えることで、次回の展示に活かせる貴重な情報も共有しています。そういった総合的なサポートが、写真家の成長にもつながると信じています。
プロフェッショナルの創造性を引き出すパートナーとして
写真表現を追求する方々へのメッセージをお願いします。
私たちの強みは、高品質な紙と、それを知り尽くしたスタッフの存在です。プロフェッショナルの方は特に、こだわりの表現を実現するパートナーとしてぜひプリント工房にご相談ください。紙の特性を活かした表現の幅を広げるお手伝いができると思います。
プロの写真家の方々は、作品に対する強いビジョンをお持ちです。私たちはそのビジョンを尊重しつつ、技術的な側面からサポートすることで、想像以上の結果を生み出すことを目指しています。作品づくりは孤独な作業になりがちですが、信頼できるパートナーがいることで、より大胆な挑戦も可能になるのではないでしょうか。
例えば、いつも光沢紙を使っている方はマット紙にも挑戦してみませんか?同じ写真でも紙質によって全く違う印象になります。私たちのギャラリーでも、星空写真の作家さんが同じ写真を光沢紙とマット紙の両方でプリントして展示したところ、来場者の反応が二分され、作家さん自身も新たな発見があったと言っていました。こういった実験的な取り組みも面白いと思います。
写真表現において、「完成形」は常に変化します。新しい紙やプリント技術によって、これまで実現できなかった表現が可能になることもあります。私たちはそういった可能性を常に追求し、写真家の皆さんに提案し続けていきたいと考えています。

ピクトリコプリント工房では、柔軟な対応を心がけています。メニューにないご要望であっても、まずはお気軽にご相談ください。フレーミング会社とも連携しながら、作家の皆さまが思い描くイメージを形にするお手伝いをいたします。作品の世界観を最大限に引き出すため、精一杯サポートさせていただきます。
技術は常に進化していますが、最も大切なのは「人」と「対話」だと考えています。作家の皆さまの想いや意図を丁寧に受けとめ、それをどのように作品へと昇華させていくかを共に考える。そのプロセスこそが、最高の作品み出す原動力になると思います。そのため、私たちはただのプリント技術者ではなく、作家の皆さまと歩調を合わせながら、ともに創作の道を歩む「良きパートナー」でありたいと思っています。
また、プリント技術だけでなく、展示全体のコンセプトづくりについてもご相談を承っております。ご自身の感覚を深く理解し、確かな技術で支えるパートナーの存在は、プロの作家にとってもかけがえのないものだと思います。私たちは、そのような存在であり続けたいと考えています。
プロフェッショナルの皆さまにとって、時間とコストは大切なリソースです。私たちはその点も十分に理解した上で、効率と品質を両立させたサービスの提供に努めております。締切が迫る案件においても、妥協のない仕上がりを実現するために全力でサポートいたします。

これからの写真業界についてどのようにお考えですか?
デジタル化が進む中でも、リアルな展示やプリントの価値は高まっていくと思います。AI で生成された写真であれ、実際に撮影された写真であれ、それを紙にプリントし展示することで、また全く違った見え方や価値が生まれます。データから写真になる瞬間、物質として残るということには特別な意味がありますよね。
テクノロジーの進化によって、写真の作り方や共有の方法は変わり続けていますが、物理的なプリントの価値は不変です。むしろデジタルコンテンツが溢れる時代だからこそ、手に取れる「モノ」としての写真の価値は高まっていくのではないでしょうか。私たちはそのニーズに応える技術と製品を提供し続けることで、写真表現の多様性を支えていきたいと考えています。
展示を通じて生まれるリアルなコミュニケーションは、デジタルでは代替できない価値があります。私たちは、そういった価値を大切にしながら、常に新しい表現の可能性を追求していきたいと考えています。写真がますます身近になる一方で、プロフェッショナルな表現が
より重要視される時代になるでしょう。その中で、私たちは確かな技術と製品で、プロの皆さんの表現を支え続けることを大切にしていきます。

ピクトリコ プリント工房 プリントマネージャーの栃原廣之氏(左)
機能材本部 画像資材営業部の山本真也氏(右)
©️Takahiro Sakai
ピクトリコの紙とプリント技術は、デジタルデータを「作品」へと昇華させる魔術のような
力を持っている。国産ならではの品質管理の高さ、10 種類以上の多彩な紙、そして作家の
意図を汲み取るプリント技術。これらの要素が組み合わさることで、写真は単なる画像から感動を呼び起こす作品へと昇華する。さらに展示空間や光、額装までを考慮した総合的なアプローチは、プロフェッショナルの表現をより豊かにする強力なサポートとなっている。
紙の選択から、プリント調整、フレーミングまで、細部へのこだわりが作品の印象を大きく
左右する。その繊細な作業を、長年の経験と技術を持つプロに託すことで、写真家は自身の表現の可能性をさらに広げることができる。ピクトリコは、まさにプロフェッショナルのた
めの「表現の伴走者」なのである。
デジタル全盛の時代に、改めてフィジカルに写真を楽しむ喜びを体験してみてはどうだろうか。